広島高等裁判所松江支部 昭和27年(や)3号 決定 1952年8月08日
請求人 大谷金太
代理人 田中節治
主文
本件請求を棄却する。
理由
本件請求の要旨は、次のとおりである。
請求人は、請求人に対する昭和二四年政令第三〇六号違反被告事件について、昭和二六年一二月二〇日、鳥取地方裁判所において無罪の言渡を受けたところ、右判決に対し、検察官が控訴の申立をなし当裁判所において審理中、昭和二七年政令第一一七号大赦令が公布されたので、同年六月四日、免訴の言渡を受け、その判決は、その頃確定したのである。仮に、右大赦令が公布されなかつたならば、検察官の右控訴は棄却されたであらうことは容易に考えられるけれども、右控訴の申立があつたため、第二審において請求人は、弁護人に対する報酬等の諸費用合計金一三、七六〇円の出捐を余儀なくされるに至つたので、茲に刑事訴訟法第三六八条、刑事補償法第二五条の趣旨に則りこれが補償を求める次第である。
併しながら、刑事訴訟法第三六八条によれば、本件の如き場合は、費用補償の請求をなし得べき事由に該当しないことは、極めて明らかであり、而かも右規定は濫りにこれが拡張解釈をすることが許されないので、本件請求はそれ自体理由がないものといわざるを得ない。
よつて、刑事訴訟規則第二三四条第三項により、主文のとおり決定をする。
(裁判長裁判官 平井林 裁判官 藤間忠顕 裁判官 組原政男)